DX時代に向けたオフショア開発のチャレンジ【後編】

前回では、日本企業のオフショア開発の現状と危機を解説し、さらにDX時代における人材不足課題の本質についても分析しました。
今回は続いて、DX時代における日本企業のオフショア開発が担うべき役割、またその目標を実現するためにチャレンジすべきポイントを解析していきます。
執筆者:鄧 彬(株式会社シーエーシー)
1.DX時代に向けたオフショア開発のチャレンジとは
日本企業が先進技術とノウハウを備えた高度IT人材を確保するため、国内だけでなく海外から優秀なグローバル人材を採用する取り組みを行っているケースもあります。ただ、海外採用プロセスや受け入れ体制の構築などには時間とコストを要しますし、採用可能人数とスピードも需要の増加になかなか応じられないのも現実です。
そこで、我々が考える優秀人材確保の手段は、オフショア企業の活用による優秀なグローバル人材の確保です。今までのオフショア開発の延長線ではなく、新たなチャレンジを行うことでDX時代にふさわしい優秀な人材を確保することが可能になります。
もし貴社が以下のポイントに該当するようでしたら、今後の取り組みについてご検討いただくと新たな展開が可能になるかもしれません。
チャレンジ1:コスト削減とした目的から脱出
コスト削減を目的としたオフショア開発では、当然安いコストという条件で人材をアサインしますが、海外においても人件費は経済発展に伴い高騰しますし、安さを求めればその分エンジニアの品質は下がっていきます。
海外オフショア委託先の選定基準はコストの比較だけではなく、自社のミッションを達成するために必要な人材、技術、品質を提供してもらえるかという観点を加え、それに相応な報酬を提供することで優秀人材を確保することが可能になります。多くの場合、日本でアサインするよりも低コストになる可能性が高いですが、それを求めすぎれば本来欲しかった人材がアサインできないということです。
これまでの「コスト削減⇒既存商品・サービスの維持⇒企業の維持」という悪循環から「優秀人材・高度技術の活用⇒高付加価値の商品・サービス創出⇒企業の発展」モデルへ転換していくために、コスト削減から脱却することはとても重要なポイントになります。
チャレンジ2:オフショアアジャイル開発の拡大
海外の人材を確保しようと考えると、新たに疑問に思うことがあります。オフショア企業のなかでも優秀人材はどのようなプロジェクトにアサインされているでしょうか?
答えは、欧米企業のアジャイルプロジェクトなどにアサインされている場合が多いように思います。
欧米企業はDXが日本より進んでいるので求められるスキルも高く、また企業にもよりますが一般的には日本の発注単価よりも高い相場となっています。つまりオフショア企業からすれば、優秀な人材をより高い金額で売れるほうが良いに決まっていますから、当然そういった企業からのオファーを重要視するのです。また、グローバルにおいて開発手法はアジャイルがメジャーですから、そういったプロジェクトの多くはアジャイルで実施されている可能性が高くなります。
つまり、欧米のオフショアプロジェクトで経験を積んでいるエンジニアは、グローバルに通用する技術とテクニックを持っているアジャイル開発者と考えられます。
チャレンジ3:オフショアアジャイル開発による国内人材育成
前述したように、旧来のオフショア開発のスタイルでは日本のSEが上流工程に集中し過ぎることで技術スキル低下の懸念があるため、IT高度人材育成の阻害要因の一つとも指摘されていますが、オフショアアジャイル開発の活用はその問題解決の一助にもなります。
受注/発注、上流工程/下流工程の分担を明確にしているウォータフォール開発と違って、チームを組んで一緒に作業することがアジャイル開発の基本スタイルなので、自社のエンジニアにとっては仕事に携わりながら海外の優秀なエンジニアから学ぶ絶好の機会となります。
企業は計画的に国内エンジニアをアジャイルプロジェクトにアサインし、海外の優秀な技術者との協働開発を通じてスキルトランスファーを実施することで、国内エンジニアの実践的なスキルアップを図るのにとても役立ち、結果的に国内の高度人材育成期間を短縮することも可能となります。
日本からもっと積極的にアジャイルプロジェクトを提供して、国内技術者と海外技術者との協働機会を増やし、お互いの成長チャンスを作り出していくことで長期的な人材確保に繋がるでしょう。
2.まとめ
ここまで述べたように、世界の市場が高速に変化を続ける一方で、日本企業は対応できる人材不足に直面しているという課題があり、オフショアアジャイル開発による海外の優秀人材活用は一つの対応施策と考えています。弊社自身もこのような取り組みを実践しながらその効果を実感しています。
オフショアアジャイル開発の拡大は多くの企業にとって大きな試練になり、時間もかかるかもしれませんが、その実現は今後のDX時代を生き残るための競争力の源泉となることは間違いありません。皆様の企業でも是非一歩踏み出してチャレンジしてみてください。
オフショアアジャイル開発について、より詳しくお知りになりたい方は、こちらよりお問い合わせください。