分散型オフショアアジャイルを成功させる秘訣: コミュニケーション課題とその対策(前編)

日本国内のエンジニア不足の課題を解消するために、多くの企業はオフショア開発を実施しており、その開発手法も基本的にウォータフォール型となっています。しかし、グローバルに見ればアジャイル開発が一般的であり優秀人材も多く存在します。近年では日本でもアジャイル開発手法を導入する企業が増加しているため、オフショア開発もアジャイル対応したいというニーズが高まっています。

一方、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、この2年間在宅勤務中心とした働き方が一気に広がり、国内でも分散型開発が浸透してきました。

とは言え、アジャイル開発における高いスキル要求に加え、リモートで開発するが故の課題も存在しており、分散型オフショアアジャイル開発のハードルは依然として高いと言えるでしょう。今回は、最も代表的なコミュニケーション課題にフォーカスし、その原因と解決策を探ってみたいと思います。

分散型オフショアアジャイルを成功させる秘訣(後編)

1.分散型オフショアアジャイル開発における課題とは

アジャイルに限らず、オフショア開発においては、以下の課題が挙げられます。
 ・時間的な課題
 ・文化的な課題
 ・コミュニケーションの課題

時間的な課題については、日本企業の多くのオフショア拠点はタイムゾーンの近い東アジアと東南アジア諸国を選んでいる為、その場合大きな問題は生じません。国民性、文化、宗教、ワークスタイルの違いなど文化的な課題につきまして、多くの日本企業は、事前かつ定期的に現地に行って仕事状況を確かめたり、ブリッジSEを現地に常駐させたり、またオフショア拠点のキーマンを日本に招聘し、研修と仕事を通じて日本のビジネス習慣を感じてもらうなどの対策をとっています。

そこで最も重要視すべき点はコミュニケーションの課題です。有効なコミュニケーションを取れない場合は、要求仕様に対する認識齟齬が発生し、そのまま放置すると開発がブラックボックス化して、最終的にプロジェクトの品質が低下し、失敗に繋がります。

ウォータフォール型の開発では、要件定義書、設計書、テスト仕様書など大量のドキュメントを作成する為、それを参照すれば、プロダクトの内容が正確に伝わらなくても開発に着手できてしまいます。しかし、実際には間違ったものができあがる場合もあり、修正ややり直しが発生し、時間もコストもかかります。

アジャイル開発の場合は、ドキュメントより動くソフトウェアを優先し、最小限の文書化しか行わないため、時間やコストを短縮することは可能ですが、迅速な開発を成功させるためにはコミュニケーションが更に重要な要素となってきます。

2.コミュニケーションの2つの課題

コミュニケーションの難しさといえば必ず課題となるのが、言葉の壁と遠距離の支障の2点が挙げられます。

日本語を話せるオフショア企業もありますが、日本の文化や商習慣を熟知した現地スタッフがいることは稀で、うまくいかないケースが多い事は周知のとおりです。そのため、最近は英語でのやり取りを採用するケースも増えており、会話やドキュメントも全て英語で実施するプロジェクトもありますが、それでも言葉の壁によってコミュニケーションがうまく取れないことも増えています。

また、物理的な距離がある場合は、対面の会話ができないため、コミュニケーションがより難しくなり、仕様確認不足や進捗管理、成果物の確認に時間がかかるといった問題が発生しやすくなります。

上記2点のコミュニケーション課題について、その解決策をお伝えしたいと思います。

課題1:言葉の障壁

アジャイル開発において、PO(プロダクトオーナー)を日本企業が担当する場合は、英語の読み取りはある程度できても、流ちょうな会話はできないケースが想定されます。そのため、オフショア先の開発メンバーにPBI(Product Backlog Item)を展開したり、進捗状況を確認したりする時、十分な説明と意見交換ができず、想定通りのプロダクト開発が進められないリスクが高くなります。

・対策:POサボートの設置
言語のギャップを埋めるため、POサポートという新たな役割を設置し、日本側で英語堪能なバイリンガルを人選して、通訳とPOの代理機能を持たせることは有効な対策です。POサポートに基本的に下記の役を割り振ります:

・PBIの作成支援(POとの協働作業、関連資料翻訳など)
・POと共に、英語によるPBIの説明・QA対応
・ミーティング・ディスカッション時の日英通訳

PBI作成においては、POが日本語で入力し、POサポートが英語に反映して開発メンバーに伝えます。また、日本とオフショア先のメンバーが誰でもいつでも最新状態のPBIを把握できるように、開発メンバーからの質問応答、改修記録を全て該当PBI内に記載し一元管理を行います。

そこでPOとして留意すべき点は、翻訳内容について丸投げではなく、大きな認識齟齬がないようにPOサポートと密連携することです。

・効果:
このように、バイリンガルの要員を加えると共に情報の共有スペースを明確にすることで、POとPOサポートは協力しながら、開発チームと直接的なコミュニケーションを実現し、しっかりと要求機能の管理と調整を行うことで、プロジェクトを確実にドライブできるようになります。

3.次回へ

次回では、リモート作業では避けられない課題「遠距離の支障」について、その問題点と改善策を解説します。

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