アジャイル人材育成の為のタレントマネージメントの在り方(後編)

前回は、アジャイル人材に求められるコンピテンシーについて紹介しました。
後編では、アジャイル人材のタレントマネージメント事例として、Mitrais社のコンピテンシーマネージメントシステム(M-CMS)について紹介・解説します。
Mitrais社とは
Mitrais社は2000年に設立されたインドネシアトップクラスのITサービス企業であり、インドネシアに4か所の開発センターを持ち500名を超えるアジャイルエンジニアを擁しています。
通常、発展途上国のITサービス企業においては人材の維持・確保が大きな課題となりますが、Mitrais社は発展途上国のITサービス企業としては非常に低いターンオーバー率を維持し続けており(下図参照)、それが高品質サービスの源泉となっています。
【Mitrais社員のターンオーバーレシオの推移】
また、下図のとおり、同社の人材マネジメントはインドネシアの就職転職市場においても、高い評価を獲得しています。
【Mitraisのインドネシア主要求人サイトにおける評価】
M-CMS(Mitrais Competency Management System )の概要
M-CMSは、営業職・事務職含めた全てのスタッフに要求される11のコア・コンピタンス、Job Familyと呼ばれる職種毎に定義されたコンピタンス、Software Engineering、Software Quality、Consultancy、Graphic Design等の技術専門分野毎に割り当てられたテクニカル・コンピタンスの3つのセットで構成されています。
【M-CMSのコンピテンシー構成】
Mitraisでは、このコンピテンシーのマトリックスをもとに求められる人材像を定義し、下図のように採用・教育・評価での活用及び、個々のプロジェクトに最適なチーム編成のために活用することで顧客への価値提供の最大化を従業員満足の両立を可能としています。
【M-CMSの活用フレームワーク】
M-CMSでは合計で500項目以上のコンピタンスが定義されているが、各コンピタンスは元素周期表を模したUIデザインでグループ化され一目で把握可能となっています。
コンピテンシー評価プロセス
社員のコンピテンシーは年2回、自己評価をベースにプロジェクトでのパフォーマンスと貢献、顧客のフィードバックにより8つのアセスメントプロセスによって5段階で評価される。評価レベルに応じてコンピテンシーポイントが付与され、昇格・昇給に反映されます。
【アセスメントプロセス】
【アセスメントレベル】
M-CMSの活用シーン
このように年2回のアセスメントプロセスによって、社員のコンピテンシーのデータは常に最新に保たれ、M-CMSのデータベースで一元管理されており、様々な条件で検索・分析可能となっています。
【コンピテンシーDB検索画面】
M-CMSはMitraisのオペレーションの根幹をなすものであり様々なシーンで活用されていますが、主な活用シーンとして人材育成・採用と営業提案があげられます。
Mitrais社では自社で数百のE-LearningプログラムとBootCampプログラムを保有していますが、マーケットの技術トレンドを踏まえ、会社としてどういうコンピテンシーを持った人材をどの程度確保する必要があるか(=コンピテンシーポートフォリオ)To-Beを描き、(現状)As-Isとのギャップを継続的に埋めていくプロセスをM-CMSにより実現しています。
また営業プロセスにおいては、顧客プロジェクト成功のために最適なアジャイルチーム構成をM-CMSを用いることで素早く計画・提案することが可能となっています。
最後に
以上、駆け足でMitrais社のコンピテンシーマネージメントについて紹介しました。DX成功のためには優秀なエンジニアの確保が必須ですが、技術変化と多様化が著しい現代において自社に必要な技術を正確に見極め、その技術を持ったエンジニアを確実に採用・育成・評価していくためには、M-CMSのようなタレントマネージメントシステム無しには極めて困難といえます。当記事がDX人材開発に携わる方のなんらかの参考になれば幸いです。
CACグループではアジャイル導入に関する様々なサービスを行っており、当記事で紹介したタレントマネージメントやアジャイル開発支援に興味のある方はこちらまで。