仮想通貨だけではなく、非金融分野でのブロックチェーン活用事例は?

前回までは、ブロックチェーンの概要や仮想通貨の事例を紹介しました。本コラムでは、近年の非金融分野でのブロックチェーン活用事例を紹介します。

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1.ブロックチェーンの活用が期待できる分野

以前のコラムでもご紹介したように、今までビットコイン等の取引に利用されてきたブロックチェーンは、金融分野だけではなく、流通・小売、医療、エンターテインメント、行政機関など様々な業界・領域、また、シェアリングエコノミー、スマートコントラクト(契約の自動実行)等多くの分野でも応用を期待されています。

株式会社矢野経済研究所が2022年2月22日発表した「ブロックチェーン活用サービス市場に関する調査(2021年)」では、2021年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模(事業者売上高ベース)は783億3,000万円となる見込み、2025年度の国内ブロックチェーン活用サービス市場規模は7,247億6,000万円に達すると予測しています。

同調査では、ブロックチェーンを活用したサービスについて、商流管理やデジタルIDをはじめとした認証など非金融領域での活動が徐々に活発化しており、特にトレーサビリティ(流通経路の追跡確認)、認証、NFTという3領域での活用の拡大を最も見込んでいます。

2.日本初の貨幣NFT鑑定書の発行

2022年3月、日本貨幣商協同組合は、日本初のブロックチェーン技術による貨幣の 「デジタル鑑定書(NFT 鑑定書)」発行開始を発表しました。

日本貨幣商協同組合は、日本全国のコイン店を加盟店として組織された組合で、収集用貨幣に関する鑑定書を発行する委員会があります。これまで発行していた鑑定書に加え、デジタル鑑定書の発行にNFT技術を活用して取り組んでいます。

NFTとはNon-Fungible Tokenの略で、日本語で「代替不可能なトークン」と訳されており、固有で唯一無二のデータや資産を指します。改ざん困難なブロックチェーンを基盤にして特定のデジタルデータを唯一無二のものとして記録し、その証明ができるようになりました。その仕組みを利用し、貨幣の鑑定書をデジタルで発行する取り組みを行っています。

このように、NFTは収集品や不動産など唯一無二、非代替性を持つ資産やデジタルアーツなど多くのアーティストの権利を保護する仕組みとしてますます活用されています。

3.ブロックチェーン活用によるフェアトレード変革

ブロックチェーンエンジニアAkash Mathew氏が立ち上げた財団「Right Origins」はオランダに拠点を置き、ブロックチェーンを活用して利益の80%を生産者のカカオ農家に還元することと、農家自身が独立したチョコレートブランドを持つことを目指す取り組みを始めています。

チョコレートの生産過程において、原料のカカオ豆が多くの加工の過程を辿り、中間業者の手数料が高額になるため、カカオ農家が受け取る利益はチョコレートのサプライチェーンのうち、6.6%に過ぎないと言われています。また、サプライチェーンが複雑で、品質保証、生産プロセスも信頼性・透明性が高くなく、多くの情報は紙媒体で記録され、記録の証明や保証も難しい状態にあります。

このような状況を打破するために、Right Originsは、農家の協同組合とブランドを共同所有し、そのデータ管理にはブロックチェーンを活用しました。
ブロックチェーン技術によって生産データの改ざんが不可能となり、消費者は透明性の高い信頼できる商品を購入できるようになるため、農家は高品質なカカオ豆を生産し、消費者とのつながりを持つことができ、独自のブランド立ち上げることもできるようになりました。
この事業を通じて得た利益の80%は農協、15%は投資家に還元され、5%は財団に残るという仕組みになっており、農家は従来のサプライチェーンの2倍~5倍の利益を得られるようになりました。

参考記事:
https://ideasforgood.jp/2020/10/14/right-origins/

4.GovTechにおけるブロックチェーンの活用

GovTech(ガブテック)とは、政府(Government)と技術(Technology)を組み合わせた言葉で、行政機関がテクノロジーを活用してデジタル化へ取り組むことを指しています。

英国Deep Knowledge Analytics社が発表した「GovTech / E-governance Global Industry Landscape in the Post-Pandemic World 2021/Q2」では、GovTech領域におけるブロックチェーン活用の可能性について、下記6つの分野を挙げています。

・スマートシティ
ブロックチェーンは、スマートシティの各種サービスや機能を構築するために必要とする安全なインフラストラクチャを提供できます。

・中央銀行
ブロックチェーンによってトランザクション量が大幅増加し、ネットワークの回復力が向上するため、中央銀行のRTGS(即時グロス決済)はより安全かつ高速に処理できるようになります。

・教育と専門資格の認証
暗号化されたIDウォレットに学業成績や専門に関するデータを保管することで、個人でのデータアクセス管理ができて、大学や雇用主も資格を検証できるようになります。

・ローンと学生助成金の追跡
スマートコントラクトによって、ローンや助成金の申請管理や支払い、条件の遵守状況を追跡することができるようになり、リアルタイムのデータが提供され、プロセスの透明性、コンプライアンスとセキュリティの向上に繋がります。

・予防接種データの管理
予防接種データをブロックチェーンに記録することで、学校、保険会社、医療機関は予防接種データを迅速に検証できます。

・給与税の徴収
スマートコントラクトは税金データを所得取引と照合し、税金及び社会保障控除を計算することにより、徴税プロセスを合理化できます。ブロックチェーンベースのシステムでは純給与と税金の支払いを適切な受取人に自動的に転送し、徴税の効率性と安全性を向上させます。

これまで述べてきたように、ブロックチェーンは金融の枠組みを超え、多くの分野で活用が進んでいます。また、国や市町村など行政機関での取り組みも進み、今後は私たちの生活の中に深く関わり、様々な課題の改善やより利便性の高いサービスの提供が期待されます。

参考:
https://cloud-ace.jp/column/detail313/

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