仮想通貨(暗号通貨)とは?初心者向けの基礎知識解説

「ブロックチェーン」を生み出した最も大規模な暗号通貨ビットコイン(Bitcoin)をはじめ、現在多くの暗号通貨が生まれています。2016年3月日本政府は「仮想通貨」という名称を使い、その機能を正式に定義しました。本コラムでは、仮想通貨についての基礎概要を紹介いたします。
1. 仮想通貨とは
仮想通貨について、日本銀行は以下のように定義しています。
インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済法に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されております。
・不特定の者に対して、代金の支払いなどに使用でき、かつ法定通貨(日本円や米国ドルなど)と相互に交換できる
・電子的に記録され、移転できる
・法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカードなど)ではない
仮想通貨はデジタル上で存在し、暗号化を使用して取引を保護するあらゆる形式の通貨であり、国家の裏付けがないために発行機関がなく、もともとは規制機関もありませんでした。代わりにブロックチェーンを使用してトランザクション(取引)を記録し、発行されます。つまり、トランザクションの検証を銀行に依存しないデジタル決済システムです。そのため、誰でもどこでも送金・受取ができます。
代表される仮想通貨はビットコインであり、2008年SATOSHI NAKAMOTOという人物により論文が発表され、誕生しました。それ以外、イーサリアム、リップルなど様々な仮想通貨が生まれています。
2. 仮想通貨の仕組み
仮想通貨の基幹技術の一つは分散型台帳技術(DTL:Distributed Ledger Technology)です。DTLでは、P2P(ピアツーピア)型のネットワークによって、ネットワーク上で対等な状態にある端末どうしが繋き、個々に同じデータ(台帳)を保有し、お互いにデータをやりとりしながら情報更新をしていく仕組みとなっており、ネットワーク利用者全員でデータを管理しています。
P2Pネットワークには全体を管理するサーバー等はなく、利用者それぞれの端末にデータが蓄積されますので、従来の中央集権型サーバーのようにデータが破壊され、完全に消失してしまうリスクは相当減軽されます。
また、P2Pネットワークでデータを更新しようとする時、他の端末が管理しているデータと常に照合し整合性を取るため、改ざんや不正取引も極めて困難になります。
そして、仮想通貨を送金する際は、取引記録のデータを受領者だけではなく、ネットワーク利用者全員に送信されます。その送信された取引記録は時系列に沿ってブロックチェーンに蓄積されていきます。
3. 仮想通貨がもたらすイノベーション領域
マーク・アンドリーセン(※)は、仮想通貨のもたらすイノベーションの領域を4つ挙げています。他にも多くの領域で応用を期待されていますが、まずは参考として、以下4つの領域について紹介します。
※マーク・ローウェル・アンドリーセン(Marc Lowell Andreessen, 1971年7月9日生まれ)、アメリカのソフトウェア開発技術者、ウェブブラウザのNCSA MosaicやNetscape Navigatorの開発に携わる人物、現在はシリコンバレーの投資家でもある。
① 国際送金
仮想通貨を活用することで、国際送金が非常に低コストで実現できると考えられています。国際送金には、非常に高い手数料がかかり、時には複数の銀行を経由し、その都度手数料がとられてしまうケースがあります。仮想通貨であれば、24時間365日、僅かな手数料で、どのような場所でも価値を送ることができます。
② アンバンクト
アンバンクトとは、銀行口座を持たない人のことを言います。主に世界の低所得層に多く、銀行システムにアクセスできないことで、様々な制限を受けています。世界には、国際競争力の観点で、貨幣が強くない国があり、ハイパーインフレやデフォルトによって、貨幣の価値が不安定になっています。そういった国の人々は、仮想通貨によって、新たに価値の貯蓄、移転など外の世界につながる可能性があります。
③ 公共支払い(寄付)
大規模な災害などが発生した際に、寄付などの価値を移転するためには、多くの手間や手数料がかかります。仮想通貨を活用し、瞬時に価値を移転することができます。こういった問題を解決するためにBitcoinVISAなどのサービスが誕生しています。
④ 少額決済(マイクロペイメント)
数円から数百円、数ドル程度の少額の決済をすることで、 動画や音楽などのマルチメディアコンテンツの配信サービス、新聞や雑誌の記事ごとのオンライン購読サービスのほか、電子マネーなどで利用されます。 これまでの仕組みでは、このような少額決済は、手数料がかかりすぎるため、実現ができませんでした。仮想通貨を活用し、このような少額決済の可能性も広がっています。
仮想通貨は、国を超えて様々なサービスに活用される可能性がありますが、法整備や技術的な課題などサービス化するためには、乗り越えなければならない課題も多く残っています。
多くの企業がそういった課題を乗り越え、新しいサービスが生まれる可能性が高まっています。
参考:
ビットバンク株式会社&「ブロックチェーンの衝撃」編集委員会、監修:馬渕邦美『ブロックチェーンの衝撃』(日経BP社、2016年)