自動車産業におけるAI技術応用:海外における自動運転技術の取り組み事例

最近OpenAI社が開発した会話型AIサービスChatGPTが話題になっているように、近年ますますコンピューターの高速化やビッグデータを扱える環境が整ったことにより、AI技術は急速に進化しています。

現在、さまざまな業界でAIの研究・応用活動が進められている中で、特に期待を集めている活用分野の一つであり、今後の我々の生活にも大きな変化をもたらす可能性を秘めているのが自動運転技術です。

今回は、海外における自動運転技術への取組み動向をご紹介します。

1.海外の自動運転技術取り組み動向

近年の画像認識や物体検出といった領域における深層学習などの技術の進化に伴い、高い認識や検知の精度を実現するAIは自動運転に欠かせない役割を果たしています。

現在、世界的に自動運転技術の開発が進んでおり、自動運転車の導入に向けた取り組みが行われています。ここでは、海外企業の自動運転における取り組みをご紹介します。

Tesla(テスラ)

新興EVメーカーでありながら2020年に時価総額が自動車業界で世界首位になったTeslaは、AIや自動運転技術の分野でも先進的な取り組みを行っています。2014年にドライバーの運転負荷を低減するための運転補助機能「Autopilot(オートパイロット)」を当時の最新モデルに搭載することを発表。2020年には「Full Self-Driving(FSD:フルセルフドライビング)」機能のベータ版をオプションで提供開始しました。FSDは現在のところ運転支援の機能に留まっていますが、Teslaは将来的なアップデートによりカメラとAIを活用したレベル5(米国SAE(自動車技術会)策定の基準。以下同)の完全自動運転の実現を目指しています。

紹介サイト:
https://www.tesla.com/autopilot
https://www.tesla.com/support/autopilot
https://jidounten-lab.com/u_tesla-history

Waymo(ウェイモ)

2016年にGoogleの自動運転開発部門が分社化して誕生したWaymoは、自動運転開発において先駆的な存在として注目されており、現在レベル5の完全自動運転に取り組んでいます。

Waymo は2018年12月にアリゾナ州フェニックスで自動運転によるタクシーサービス「Waymo One」を一部のユーザー向けに開始、その後一般ユーザーへも提供を拡大しています。「Waymo One」にはレベル4(高度自動運転)の自動運転機能を搭載した電気自動車「JAGUAR I-PACE」が導入されています。また、2020年にWaymoは自動運転システム「Waymo Driver」の第5世代を発表し、現在は物流における自動運転トラックの実用化にも注力しています。

WaymoはAIなどの最新技術を積極的に取り入れており、自動運転技術の進化を加速することが期待されています。

紹介サイト:
https://jidounten-lab.com/u_waymo-history
https://waymo.com/waymo-driver/

百度(バイドゥ)

中国ネット検索大手の百度は、自動運転技術の研究開発に2015年から多大な投資を行っており、2017年には自社の持つAI技術を他の企業に提供するオープンソースの手法による「Project Apollo(アポロ計画)」と呼ばれる大規模な自動運転車の開発連合を開始しました。2018年には、自動運転プラットフォーム「Apollo」を搭載した自動運転バス「Apolong(アポロン)」の量産開始を発表しました。百度はレベル4での試験走行距離が5,000万キロメートルを超えると言われ、自動運転技術の開発を加速しています。

また、百度は自動運転技術の研究開発に力を入れるだけでなく、自動運転タクシーなどのサービスの提供にも注力しています。

紹介サイト:
https://www.apollo.auto/autonomous-driving
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd127420.html

VOLVO(ボルボ・カーズ)

2030年までに完全な電気自動車メーカーになるという目標を掲げるスウェーデンの自動車メーカー・ボルボ・カーズも自動運転の技術開発を加速させています。

2020年にアメリカのLiDAR開発ベンチャーLuminar(ルミナー)と提携し、同社のLiDARセンサーを自社の自動運転車両に標準搭載することで自動運転の安全性向上を強みとしています。また、2022年に自動運転ソフトウェア企業Zenseact(ゼンセアクト)を完全子会社化して、自動運転技術の開発と商業化を加速させようとしています。さらに同年、ZenseactやLuminarと研究開発したレベル3に相当する自動運転機能「ライド・パイロット」の展開を発表しました。

ボルボ・カーズは世界の自動車メーカーの中で安全性に注力していることで知られていますが、自動運転においても業界をリードする安全性の実現が期待されます。

紹介サイト:
https://www.media.volvocars.com/global/en-gb/media/pressreleases/308285/volvo-cars-takes-full-ownership-of-zenseact
https://www.vcj-press.jp/pressrelease/2022-01-07-1/
https://jidounten-lab.com/u_33418

2.まとめ

今回ご紹介したように、各国の自動車メーカーやテクノロジー企業は自動運転の研究・開発を進めており、そこに交通事故の減少や交通渋滞の解消、環境負荷の軽減、モビリティの向上など、多くの期待が寄せられています。AIなど技術のさらなる進化に伴って、今後自動運転車もより高度な予測力や判断力を持てるようになると期待されています。

近い将来により安全で便利な社会インフラとして、完全自動運転が実現されることを楽しみにしています。

参考:
https://jidounten-lab.com/u_36605
https://digital-shift.jp/flash_news/s_201216_32
https://digital-shift.jp/flash_news/s_201216_21#item21200

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