クラウドネイティブを実現するクラウドサービスプロバイダー(CSP)とは?代表例を比較

クラウドコンピューティングの活用はあらゆる業界で進んでおり、従来のITコストの削減という守りから、業務自動化や機械学習による省力化などビジネス変革へと活用の中心がシフトしつつあります。
そのような状況下、クラウド活用を前提としたクラウドネイティブの実現には、自社のビジネス改革を踏まえたクラウドサービスプロバイダー(CSP)の選定が重要になります。一方、現在では多くのクラウドサービスプロバイダーが存在する中、自社にとって最適なプロバイダーを選択するプロセスも複雑化しています。
本コラムでは、選定時の参考材料として、5つの代表的なクラウドサービスプロバイダーをピックアップし、それぞれの特徴について解説いたします。
1.Amazon Web Services(AWS)
AWSは、現在最もよく知られており、幅広く使用されているクラウドサービスプラットフォームの一つです。アマゾンが展開する様々な事業において、最も収益性の高い部門に成長し、世界中の企業に利用されるクラウドサービスプロバイダーとして知られ、信頼されています。
2004年に、AWSの基盤になるSimple Queue Service(SQS)を開始し、2006年には独創的なクラウドサービスストレージソリューションであるSimple Storage Service(S3)と企業がクラウドでアプリケーションを構築できるようにするElastic Compute Cloud(EC2)をリリースしました。現在では、そのサービスは数百まで拡大しています。
これらのサービスには、コンテナ、カスタマーサービス、ストレージ、VR・AR、IoT、データベースなどが含まれています。各サービスをネイティブに相互運用できるように構築されており、組織向けのスムーズなエンドツーエンドのITソリューションを設計・構築が可能です。
コア原則は「セキュリティはジョブゼロ」であり、規模に関係なくエステートを管理するために必要なすべてのツールを提供しています。
コスト管理ソリューションとインフラストラクチャーを保護・最適化するレコメンデーションを提供するオファーとの相乗効果で、他のクラウドプロバイダーやオンプレミスインフラストラクチャーより速く、安全に、安価に提供することを可能にしています。
AWSのユーザーはスタートアップからエンタープライズ企業まで、現在グローバルで数百万以上、日本でも数十万を超える顧客に利用されています。
2.Azure
Microsoft 社が提供しているAzureプラットフォームは、AmazonのAWSと並ぶ人気のクラウドサービスです。Azureは製品単体、相互接続されたコンポーネント、またはエンドツーエンドのパイプラインとして使用できる数百のクラウドサービスで構成されています。
製品ラインには、バーチャルマシン、AI・マシンラーニングサービス、コンテナインスタンス、データベース、DevOpsパイプライン、ストレージソリューション、メッセージングサービスなどが含まれています。
使いやすいインタフェース、多くの価格帯モデル、最高水準のサービスを備えているため、ITインフラストラクチャーを実装するために、シンプルかつ費用効果の高いサービスになっています。
また、最先端のセキュリティおよびコンプライアンスツールは、多層セキュリティアプローチで、アプリケーションとデータを保護しながら、基盤となるハードウェアとファームウェアが保護されています。
パートナー企業からのサポートも豊富で、費用対効果、コンプライアンス、ワールドクラスのITサービスを保証するため、マネージメントプロセスのセットアップも行っています。
Azureは様々な業種の企業で使用されており、中でもプロフェッショナルサービスや製造業での割合が多いようです。
参照サイト:
https://www.appsruntheworld.com/customers-database/products/view/microsoft-azure-cloud-services
3.Google Cloud Platform(GCP)
GCPはGoogle社が運営するクラウドサービスであり、市場シェアはAWS、Azureに次ぐ世界第3位(中国市場を除いた場合)です。ユーザー数がAWSやAzureには及ばないものの、競争力のある価格設定で同様のサービス範囲を提供しており、全体的な利用コストが低いため、今後の成長が期待されています。
提供するサービスは150種類を超え、その中にはインフラストラクチャー、マシンラーニング、データ分析、アプリケーションの構築と管理、データベースなどが含まれています。また、200か国以上で利用されているGoogleと同じインフラストラクチャーで実行されるため、信頼性もあります。
皆さんもご存知の通り、Google社はAI分野における機械学習、ディープラーニングにかなり注力しているため、通常のクライアントサービス以外にAI関連サービスも提供されているGCPは、今後の需要が一層高まる可能性があります。
但し、GCPの公式ドキュメントには日本語訳がまだ少ないため、英語が苦手な技術者には難易度が少し高いかもしれません。
参照サイト:
https://cloud.google.com/terms/services
https://www.contino.io/insights/whos-using-google-cloud-platform
4.Oracle Cloud
OCIは、オラクル社が提供する企業向けのパブリッククラウドサービスで、AWSやAzureと同様にアプリケーションをクラウドにデプロイ、構築、拡張、統合するために使用できます。
このプラットフォームは、オープンソース、ツールとフレームワーク、プログラミング言語、サードパーティソフトウェア、データベースをサポートしており、データセンターのグローバルネットワークを介してサーバー、ネットワーク、ストレージ、アプリケーションを提供しています。また、マルチクラウドやハイブリッド環境向けにも最適化されています。
主な機能はITプロフェッショナル、ビジネスリーダー、開発者が拡張、接続、開発、共有し、デバイスとアプリケーション全体で有用なインサイトを取得できるようにすることです。
主なメリットは、高いセキュリティ、パフォーマンス、スケーラビリティの提供があげられます。ユーザーは優れたセキュリティ機能、コストの削減、生産性を向上させることが可能になります。また、高品質のサービスを提供するわりにAWS、Azure、GCPよりも低料金のため、コストを抑えたい企業にはおすすめかもしれません。
OCIのユーザーは、情報技術とサービス業界のアメリカ企業が多いようです。
参照サイト:
https://solutions.system-exe.co.jp/oracle-cloud/blog/the-share-rate-of-oracle-cloud
5.IBM Cloud
IBM CloudはIBM社が提供する企業向け、インフラストラクチャー、DevOps、API分析、データベース、ストレージ、インテグレーションサービスなどを備えたパブリッククラウドサービスです。
主なメリットは、その柔軟性にあり、ビジネスニーズに応じてスケールアップまたはダウンすることが可能です。
また、ライセンスの有効期限を待たず、内部変更に簡単に対応できるようになっています。すべてのソリューションが1つのサイズのみに対応できるように設計されていないため、企業の規模に応じて調整することができます。
それだけではなく、特定のクライアントの要件に対応するように設計されており、特定のユースケースに対応するようになっています。
IBM Cloudのユーザーは、アメリカのトップ50企業に当たるFortune 50のうち47社に利用されていて、日本でも製造業、流通業、金融機関、医療機関など様々な業界におけるさまざまな企業規模の顧客が利用しています。
参照サイト:
https://www.fool.com/investing/2020/09/20/things-ibm-wants-you-know-about-cloud-strategy/
https://www.ibm.com/blogs/solutions/jp-ja/ibm_cloud_client_reference_2021/
https://cloud.ibm.com/docs/overview?topic=overview-whatis-platform
6.まとめ
現在では世界規模でのDXが加速し、クラウドネイティブへの移行が優先事項ともなっています。クラウドコンピューティングの市場規模は、かつてないほど大きくなり、拡大を続けています。
このようなクラウドネイティブの大きな潮流は留まる状況になく、企業の経済活動において、遅かれ早かれクラウドサービスプロバイダーを選定する必要があることは間違いありません。
クラウドサービスプロバイダーの選定に当たっては、自社の事業発展のための方向性と抱える課題の分析が重要になります。自社の事業の方向性や解決すべき課題を明確にした後、各クラウドサービスプロバイダーの特徴に照らし合わせて、プロバイダーの選定からクラウドネイティブへの移行を一歩進めることができるのです。
次回は、クラウドネイティブへと移行した企業がどのような課題を克服し、成功に導いたのかについてご紹介いたします。