DXで注目されるCCoEとは?クラウドサービス活用の成功事例3選

あらゆる業界でクラウドコンピューティングの活用が推進される昨今、CCoE(シーシーオーイー)という組織を設置する企業が増えています。

CCoEとは「Cloud Center of Excellence」の略で、企業がクラウドを活用するための仕組みを整備し、広めていく部門横断型の専門チームを指します。その目的は、クラウドが持つ柔軟性や俊敏性、コストメリットを最大化し、企業のDXを加速させることに他なりません。

本コラムでは、このような専門チームを先駆けて設置してクラウドへの完全移行を実現したCapital One、また積極的なクラウドサービス活用へと舵を切り、DXの目的であるビジネスモデルの変革と競争優位の確立したAirbnb、DISH Networkの異なる業界3社のクラウドサービス活用事例をピックアップし、それぞれの特徴について解説いたします。

1.事例1:Capital One

(https://www.capitalone.com/)

現在、様々な業種・業界において大規模なDXが促進されており、金融機関においても顧客データを今まで以上にスマートに活用することで、より幅広く詳細にパーソナライズ化されたサービスを提供する試みが旺盛です。
その先駆けとしてクラウドへの全面移行に着手し、先頭に立ったのが、アメリカの大手金融機関「Capital One」です。

Capital OneのDX(クラウドへの移行)は2012年から始まりました。11000人規模のテクノロジーチーム(85%がエンジニア)を構成し、アジャイル、マイクロサービス、DevOps、オープンソースなどを積極的に採用しています。2020年には、アメリカの銀行として初めてレガシーデータセンターからの撤退を完了し、クラウドへのオールイン(完全移行)を実現しています。

Capital Oneのクラウド活用の特徴の一つとして、マシンラーニング(機械学習)による不正行為の検出が挙げられます。
日々AWS にデプロイされたアプリケーションを通じて、数百万のトランザクションを処理しており、クラウド活用によるビジネス成功の核として、不正行為の迅速な検出と効果的な与信承認を行うためのビッグデータによる意思決定があります。

AWS上のTensorFlowなど、マシンラーニングツールを活用することで瞬時に大量のデータを分析する機能を備えており、リアルタイムで不正行為を検出し、防止することを可能にしました。
具体的には、不正が疑われるアクティビティが発生すると、該当者(顧客)に対して自動的にアラートが送られ、同時に詐欺レポートの手順を説明し、既存のカードをロックして新しいカードの発行手続きを開始します。また、新しいカードが有効になるまでオンラインで使用可能な仮カード(暫定的なカードナンバーとセキュリテイコード)を発行します。

このようなDXは、Capital Oneの文化までも変えました。
様々なコンテンツ配信のスピードが加速され、クリエイティブなソリューションの設計も可能です。また、インフラストラクチャの管理工数が削減された分、今まで以上に顧客に向けたイノベーションの実現に注力できるようになったことで、顧客との関わりについてより多くの洞察を得て、ビジネス上の意思決定に役立てています。

参照サイト
https://thenewstack.io/how-open-source-drives-cloud-innovation-at-capital-one/
https://www.redapt.com/blog/5-companies-that-are-winning-big-with-cloud-native
https://www.snowflake.com/blog/how-capital-one-leverages-the-power-of-data-in-the-cloud/
https://aws.amazon.com/machine-learning/customers/innovators/capital_one/
https://www.experian.com/blogs/ask-experian/what-is-a-virtual-credit-card/

2.事例2:Airbnb

(https://www.airbnb.com/)

2008年の設立以来、220以上の国や地域で利用可能なホームシェアリングサービスを展開するAirbnbは、設立1年後の2009年に早々とAWSへの移行を開始しました。AWSが選定された理由は、移行以前のプロバイダーで抱えていたデータ管理の問題解決とカスタマイズしやすさでした。

増え続ける様々なデータやトラフィックの管理には、Amazon Elastic Compute Cloud(Amazon EC2)を利用し、自動的にトラフィックを分散することができるElastic Load Balancing機能によりデータ・トラフィック管理の最適化を行っています。

その他にも、ユーザーの写真やバックアップファイルにおいては、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)など複数のAWSサービスを利用し、全てのサーバーリソースの管理には、Amazon Cloud Watchを利用しています。

このように、AWSサービスの利活用によってデータベース構築のための工数(時間)の削減、データやトラフィック管理のためのタスクを簡単にできました。

さらに、必要な処理能力の増減に対応するスケーリングの難しい手順について、基本的な API 呼び出しや AWS マネジメントコンソールを介して完了することも可能です。

参照サイト
https://aws.amazon.com/solutions/case-studies/airbnb-optimizes-usage-and-costs-case-study/
https://aws.amazon.com/solutions/case-studies/airbnb-case-study/

3.事例3:DISH Network

(https://www.dish.com/)

DISH Networkはアメリカのテレコミュニケーション企業です。レガシーインフラストラクチャを抱えていることも少なくないテレコミュニケーション業界において、DISH Networkは競合他社に先駆けてクラウドコンピューティングを採択し、競争優位を獲得しています。

2021年にDISH Network はAWSを利用したクラウドベースの5Gネットワーク構築に着手し、5G ネットワークをクラウドで実行する最初の事例となります。AWSの利用によって、運用の自動化とビジネスサポートシステムが強化され、5G ワークロードの運用が可能になります。

クラウド上でのネットワークの実行には、以下のようなメリットがあります。

メリット①
AWSのマシンラーニングを活用して、ネットワークが混雑する領域の予測や、ネットワーク機能の異常を発見することができる。

メリット②
ハードウェアとソフトウェアのアップグレードを迅速に行うことができる。

メリット③
サーバーレスでネットワークを運用できるため、サーバーを購入してオンサイトまたはプライベートクラウドより安価にコストを削減できる。

メリット④
5G アプリケーション作成のプロセスを簡素化できる。
標準化されたアプリケーション API を利用してデータをキャッチアップした後、マシンラーニング、分析、セキュリティなどの面で、データ活用のためのソリューションを作成できます。AWSとパートナーネットワークの活用で、5Gネットワークを高度に自動化して運用し、5Gアプリケーションをさらに迅速に展開可能になることで、差別化(競合優位)を図ることができます。

単なる通信サービス・プロバイダーとしてではなく、5Gとクラウドを活用するデジタルサービス・プロバイダーとして、ユーザー(顧客)は5Gの可能性を最大限に享受できるようになるのです。

参考サイト
https://www.zdnet.com/article/dish-to-build-the-nations-first-cloud-native-5g-network-on-aws/
https://about.dish.com/2022-01-27-DISH-Sets-Data-in-Motion-with-Confluent,-Unlocking-the-Power-of-the-First-5G-Smart-Network-TM
https://www.counterpointresearch.com/dish-network-aws-cloud/
https://press.aboutamazon.com/news-releases/news-release-details/dish-and-aws-form-strategic-collaboration-reinvent-5g

4.まとめ

このように、業界や目的の違いを問わず、クラウドサービスの活用メリットは多岐に渡り、5Gネットワークなどの先進要件の実現を促進し、最先端技術を生み出すことも可能です。そして、いずれのケースにおいても共通するのは、生産性(業務効率)を向上させることができ、費用や工数のコスト削減ができるということです。

前述の通り、金融サービスでは不正検出に活用され、ホームシェアリングサービスでは管理タスクのリソース削減やスケーリングの簡素化に活用されています。また、テレコミュニケーションサービスではコスト削減はもとより、アプリケーションの開発プロセスの簡素化も実現しています。

クラウドサービスは、今後もますます多様な業種で利用され、想像以上に活用の範囲が広がっていくことは間違いないでしょう。

※アマゾンウェブサービスおよびAWSは、米国その他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。

おすすめ記事